犬のトレーニングの中でまず最初に取り組むべきことは、生活環境の整備です。
整備の中には、様々な見方による整え方があります。
その見方の中には、犬にとって快適で安全な環境とはどのような環境かという視点です。
快適で安全な環境と聞いて思い浮かぶのはどんなことでしょうか。
たとえば、水がいつでも飲める、室内の温度が適切に管理されている、部屋が清潔に清掃されているということも、それらのひとつにはいるでしょう。
その中でも、室内飼育の場合には、室内の床面の素材については慎重に選択してほしいものです。
室内の床面は人にとって快適であるように作られています。
特別な環境ではない限り、床面は畳、フローリングのどちらかです。
人が歩きやすく、心地よく、掃除がしやすいように作られている傾向が強いようです。
その、人にとっては快適な床の環境が、犬にとっては苛酷なものになっていることがあります。なぜ、そのようなことが起きるのかというと、人と犬では足裏の地面を支えるつくりが異なるからです。
犬の足跡のマークであるパウ型を見ると、地面についている指の部分がわかります。
実は、このパウ型にない別の部位が地面に着地してバランスをとっています。それは、犬の脚の爪です。
なぜ犬のパウ型から爪の部分がなくなってしまったのか、デザイン上なのかそれとも犬の爪を人が切るようになったことで床部につかなくなってしまったからなのか、よく理由はわかりません。
お手本になる犬のパウ型はドイツのアウトドアメーカーのジャック&ウルフスキンのパウマークです。これは、オオカミの仮面をかぶったジャックという犬という意味のマークなのでこのマークは犬の足跡をデザインしたものです。指の上についた部分が爪の先が地面に着地した部分です。こんな感じです。
これが、人と犬の足裏の使い方の大きな違いです。この違いが人が選択した快適な床面が、犬にとっては快適ではない素材となってしまう理由です。犬の爪は鉤爪という形のもので、その爪の先は地面に食い込んで体を支えるようにできているのです。
最近では家の洋風化が進み床の素材はほとんどがフローリングになっています。一部はテラコッタのようなタイルになっていたりします。どちらの素材も硬くすべりやすいものです。犬の爪が伸びていると爪が床にあたって曲がってしまうことがあります。そのため室内飼育の犬の爪を人が短くカットしてしまいます。こうすることでフローリングにあたらないようにするのですが、このことは爪で地面をささえられないという問題を生じます。
もうひとつの足裏の違いは皮膚の違いです。人の足裏の皮膚は他の皮膚とたいした違いはありません。これと比較すると犬の足裏の表面は他の皮膚の部分と明らかに違っています。これらも、人と犬の地面の感覚を異なるものとする違いなのです。犬の足裏ではフローリングやタイルではすべりが生じてしまい、いつもつるつるとすべりながら歩いています。人が氷の上にのったような感覚になり、すべるのを四つ脚に力をいれて踏ん張ろうとするため脚に負担がかり、結果背骨がとても堅くなったり丸くなったりしてしまいます。人にとって快適で安全な床が、犬にとっては不快で怪我をしかねない危険な環境になっているということです。フローリングと共に畳も意外と滑りやすい素材です。
では、犬にとって快適で安全な床とはどのような床でしょうか。
最適であるのは犬が本来歩いていた土のある地面なので、その地面の質にできるだけ近いものということになります。やわらかく湿度が適切にあって…。地面と同じ質のものは室内には実現できませんが、まず選択するならじゅうたんです。それも、軽くて動いてしまうようなじゅうたんではなく、重みがあってしっかりとした素材のものです。
ホームセンターで販売している裏面がゴムで表面がウールやコットンなどの天然素材になっている張り合わせるようなじゅうたんでも、ある程度の快適さが実現します。
コルク素材を使われる方もいます。犬用にすべりにくいコルクというものもあるようです。床面そのものが犬にとってすべりにくいタイルとして提案されているものがありますが、実際には触ってみないとわかりませんので、実物をよくみてある程度の弾力のあるものをお勧めします。犬が本来移動する土は、大変やわらかく犬の体重の衝撃を吸収してくれます。
室内の床は室内犬が生きる時間の多くの時間を費やす場所です。すべりやすい床は身体的に故障をきたすだけではありません。不安定な床面によって不安を抱きやすく、落ち着きのない性質をつくることにもなります。
大切な犬のために、床の素材には余分に予算をさく価値があります。
まずホームセンターのじゅうたんから始めてみてください。
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