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犬の行動を観察する動機:動物行動学を飼い主として利用する意味

動物の生態と行動について知るためには、まず動物について観察して分析することです。

動物の生態には、どんなものを食べているのかなども含まれます。
動物の糞の中に排出されている動物が食べたものを採取して分析すれば、
その動物が何を食べているのかという食性を知ることができます。
またそこから、その食を得られる場所がある程度特定されると、
動物が食を得るために行動している行動圏といわれる範囲が特定されてきます。

先日、天皇陛下がタヌキの食性についての研究論文を発表されたのも、長い期間にわたる観察の結果です。

動物の生態はこのように周囲の環境との関係によって成り立っています。
これらを包括的に捉えていく生態学は、エコロジーといわれます。

これに対して行動を学ぶ勉強の分野をエソロジーといいます。
あくまで学問の分類であり、二つの学びの分野の重なりは常にあります。

動物行動学で行動を知るために行う方法は、とにかく行動を観察することです。

動物行動に関しては、希少動物の行動研究に多くの予算がかけられています。
なかなか見ることのできない動物を観察することのほうが研究も希少ということかもしれませんし、
希少動物はいずれこの環境から絶滅してしまう恐れもあるため、
今のうちに情報を知りえておこうということかもしれません。

そういう意味でいえば「イヌ」はいつでも世界中の非常に多くの地域に生息する
非常に数の多い動物であることから、研究対象とはなりにくい存在です。
イヌは環境への順応性が高く、人と共に行動することが可能であったこととや
人から作業などの役割を持たせられたことで、人と同行する必要性も高まり、
人の移動の範囲の変化に伴って、広域に生息するようになったのです。

こうして、イヌは行動研究から遠ざけられてきました。
しかし、ローレンツ博士など生活の中にいる動物の行動にもその視点を失わなかった学者が
身近にいる動物に対しても研究対象の動物と同じように生活の中で観察をして得た内容が、
「人、イヌにあう」といった本となって出版されるようになりました。

こうした視点は、多くの人の子供のころには行われていたことだと思います。
たとえば、公園や神社で珍しい昆虫や動物を見つけて、それがどのように行動しているのかを知りたくて
長い時間眺めていたということはないでしょうか。

ところが、こうした他の生物を観察しようという意欲は、成長と共に失われていくことが多いようです。
理由はわかりませんが、ひとりで生存する力のない子供にとっては、生きているもの同士のつながりが
環境をつくっているという自然の感覚が生きているのかもしれません。

都市化が進み、子供のころに昆虫や動物たちに自然とふれあえる環境も失われてきました。
特にイヌは子供たちにとって親からあてがわれるオモチャのような存在となりつつあります。
子供たちにとってだけでなく、大人にとってのイヌも同じような存在に変化してしまう恐れもあります。
イヌは人に癒しを与えるために必要な道具になりつつある傾向もあることを否定できません。

イヌはもともと自然界に存在している動物で、長い時間をかけて人のそばに暮らすようになりました。
その間、子供たちの風景の中にいつもイヌは興味のある観察の対象として存在していたことでしょう。
その観察のし方は、フェアで自然な視点によるものではなかったかと想像します。

これを実現させるためには、観察者が観察の対象となるものを利用するという目的を持たないことが必要です。

人が犬をさまざまな理由で利用するという関係性を保持し続けたままの観察では、
観察対象の犬に「こうあって欲しい」という気持ちが優先してしまい、冷静に見る力を失います。
犬という動物に対する好意的な思い込みもその見る力を低下させてしまうでしょう。

見たものに感情が生じるのは単純な人の心理です。
その心理を抑えることは難しいものでありますが、見る力は次第に育ちます。

行動は種により異なることがあるため、行動学は比較行動学といわれることもあります。
ただ、人と犬は生活環境を同じくし、互いに強く影響を与え合っている存在です。
犬の行動を観察してその行動心理を探ることは、実は人の行動心理にもつながっていきます。

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