グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬の隠れる術「カモフラージュ」

ご家庭にレッスンに伺うと、汗だくで「犬を洗ったんです。」といいながら飼い主さんが出てこられました。様子を伺うと、田舎のご実家に連れていったところ、田んぼの中を走り回ってドロだらけになってしまったため、汚れた犬を洗ったとのことでした。

犬が楽しげにやっていることは、遊びもあるけど犬なりに意味のあることもたくさんあります。若い犬が泥まみれになってはしゃいだりするのは、遊びの一面もありますが、犬としては理にかなった行動でもあります。

若い犬で、まだマーキング行動を行えない犬は、自分のテリトリーを守ることもしません。生活圏となるテリトリーは群れで守っているので、飼い主さんの気配に頼りきりになるか、黙って隠れていたりします。
ところが、守るスペースといってもいろいろとあります。一番小さな自分だけの領域、つまりプライベートスペースは最初に守るべき空間となります。自分で守る術を身に付けながら、生きていくために必要な安心を獲得しようとするのです。群れに守ってもらうだけでなく、個体でも安全を確保する「身を守る術」に「カモフラージュ」があります。

昆虫がいろんな色や形で自然の風景の中にカモフラージュしていることは有名ですね。森の動物が木の葉のような目立たない色をしているのも、カモフラージュのひとつです。人は視覚の動物ですが、犬は嗅覚の動物です。カモフラージュも臭いを通して行われます。田んぼを走った幼犬は、最初は広い場所に興奮して走り出したのでしょう。そのうち周辺を漂う強い泥の臭いに気づきます。その臭いを全身につけるために、田んぼの中で寝転び四肢を空に向けます。このころには、その風景のそばで飼い主さんの悲鳴が上がることが想像できます。

全身が泥だらけとなった若い犬。臭い泥の臭いで自分の臭いはしっかり隠せています。これで安心して生活圏を離れても行動することができます。犬は自分を完璧にカモフラージュしました。でも、こうした行動は人にはなかなか受け入れてもらえません。人は犬と比較すると嗅覚が全く発達していないわりには、臭いものには反応が強いのです。犬にとって臭いものは、人工的な香料やシャンプーの臭いや洗剤の臭いなのに、人にとって臭いものは、泥の臭い、糞便の臭い、汗の臭いなどです。動物としては異種ですから、犬と人の世界は異なることがあるのは当然です。どちらの世界を優先するのか。人は案外迷いません。
若い犬が、カモフラージュした自分を満喫したのはわずかな時間でした。

もし、こんなことに遭遇したら、少しの時間でいいからそのままにさせてあげてください。洗ってはいけないなどとは言いません。室内に犬をあげるためには、汚れは拭き落としたくなりますよね。その気持ちはよくわかります。室内に臭いのついている香料や、アロマを焚かれるなら、それを少し遠慮してあげてください。集合住宅は風のとおりが悪く、以外に臭いがあります。それもいい香になっています。

自然の中で過ごすときには、思いっきり泥臭く過ごしてください。犬が犬らしい行動をするときは、それを認めてあげたいものです。私たちは違う世界観を持つ犬という動物と共に暮らしています。互いを認め合うこと、これからも大切にしていきたいです。

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